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何も言わずに立ち去る。
これが私に残された最後の決断かもしれない。
彼が求めるような女性はこの世界には実在しない。
自分を救うのは自分自身でしかない。
彼はひとり、独りというけれど
他人を信じない、何も信じていない人間には
誰の声も聴く耳は持たないのだろう。
ただ頷いて、聴いているふりなのだろう。
彼は願いが叶わない。
私の願いは叶う。
その違いだ。
私は幸せにならなければならなかった。
それは、私に約束された運命だった。
私は幸せになって、人々を幸せにしなくてはならなかった。
彼は自分で幸せを掴み取る。
できるはずだ。
そう、信じてさえいれば・・・
「幸せになるんだよ」
不倫の嫌いな彼を幸せにできるのは私ではないだろう!?
私は悲しみを背負って、誰彼の幸せのために走るんだ。
普通の人が一番尊いと、そう信じて、
普通の人が誰彼の幸せを祈って、
世界を平和に導いていくんだ。
もう、私自身のことはどうでも良いんだ。